たにむらクリニック

岩手県盛岡市向中野にある甲状腺専門医施設|たにむらクリニック

一般的に、甲状腺の機能亢進を正常にするための治療方法としては、「薬物療法」「手術」「放射性ヨード療法」の3つがあります。

現在のところ、バセドウ病の発病のしくみがまだ十分に分かっていませんが、バセドウ病に対しては次の3つの治療法があります。

薬物療法

抗甲状腺薬を内服し、甲状腺ホルモンの産生を抑制します。

手術

甲状腺を基本的には全摘します。術後は機能低下症になるため甲状腺ホルモンの内服が必要となります。

放射性ヨード療法

放射線ヨードを内服し、甲状腺細胞を破壊する事により、甲状腺機能を低下させます。治療後は徐々に機能低下症となることが多いため、状態に応じて甲状腺ホルモンを内服する必要があります。


それぞれ治療方法には、一長一短があるので、どの治療方法を選択するのが適当であるかを患者さんの状態に合わせ、よく検討する必要があります。主治医の先生とよく相談して下さい。

基本的に、服用し続ける限りは注意が必要です。

バセドウ病の治療に用いられる抗甲状腺薬(メルカゾールやプロパジール)は、優れた薬剤ですが副作用の頻度も比較的高い薬剤です。内服開始の際には必ず副作用とその対応方法の説明を行なっております。アレルギーによる皮疹やかゆみは抗アレルギー薬併用にて対処可能なことが多いですが、痛みを伴うような皮疹や肝機能障害が出たら内服を中止する必要があります。内服開始から2か月は副作用が起こりやすいとされており、2週間ごとに血液検査を行います。

最も重篤な副作用である無顆粒球症は、白血球がなくなる副作用であり発熱や咽頭痛があれば、内服を中止し白血球数をチェックする必要があります。発熱や咽頭痛はコロナウィルス感染症の症状と見分けがつきにくいため、当院でバセドウ病の治療開始からあまり時間の経過していない患者様はまずはご相談下さい。

細胞診とは、甲状腺に結節が見つかった際に、結節が良性なのか悪性なのか、手術した方がいいのか、経過をみても良いのかを調べるための検査です。実際には、細い針(採血で用いる針と同じもの)を結節内に刺して、細胞を採取し顕微鏡で調べます。

細胞診は甲状腺診療に長く従事している医師が行います。超音波で結節を確認しながら穿刺し、5秒程度で終了します。

検査後は針を刺した部位を5分程度圧迫します。当日は激しい運動、長風呂、飲酒は控えて下さい。

まれに穿刺後に甲状腺から出血することや穿刺の刺激により浮腫を起こすことがありますので、検査後に異常を感じた際には当院へご連絡下さい。

薬は決められたとおりきちんと内服して下さい

甲状腺が体に必要な量のホルモンを十分分泌できない場合、甲状腺ホルモン剤を内服して不足分を補います。内服量は医師が採血結果を基に判断しておりますので、決められた通りに内服して下さい。

甲状腺ホルモンは多すぎても少なすぎても体に影響します。特に過剰な場合には骨粗鬆症のリスクを高めます。また、不足している場合には代謝が低下するため、むくみやコレステロールの上昇、脱毛などといった影響が出やすくなります。

内服するタイミングはある程度一定していた方が良いですが、基本的にその日のうちに内服できていればさほど問題にはなりません。

症状によって内服期間は異なります。

チラーヂンS®︎ (もしくはレボチロキシンナトリウム『サンド』®︎ )とは甲状腺ホルモンそのものを製剤にした薬です。内服を中止するとおよそ2週間〜1か月で内服前の状態に戻ります。

一過性の甲状腺機能低下症を除き、橋本病などを原因とした甲状腺機能低下症、甲状腺全摘術後、バセドウ病の放射性ヨード内用療法後の甲状腺機能低下症の場合には甲状腺ホルモンの内服が生涯必要と考えられます。内服継続の必要の有無は血液検査のTSHを基に判断します。

また、最近では妊娠希望の方でTSHに異常が認められる場合に、不妊のリスクを下げるため妊娠希望時(妊娠中含む)のみ内服加療を行うこともあります。

はい、一緒に飲んでも大丈夫です。

市販の風邪薬の注意書きには「甲状腺機能障害と診断された人は医師に相談してください」と記載されています。甲状腺の病気で通院中の場合は服用できないのか?と心配になるかと思いますが、風邪薬の成分で、バセドウ病の薬やチラーヂンとの飲み合わせが悪いものはないので、一緒に服用することができます。

風邪薬で注意が必要なのは、ヨウ素や自律神経を刺激する成分が含まれている場合です。ヨウ素はうがい薬などに含まれており、橋本病の場合は甲状腺機能が低下することがあります。風邪のときなど数日間の場合は問題ありませんが、習慣的な使用は避けるようにしましょう。

自律神経を刺激する成分(ジプロフィリン、エフェドリンなど)は、漢方薬、咳止めなどに含まれており、甲状腺機能が正常な方は心配なく服用できますが、バセドウ病で甲状腺ホルモンが正常化していない方は息切れや動悸を感じる場合があります。

声の変調すべてが甲状腺によるものというわけではありませんが、声の変調に気付いたらまず、耳鼻咽喉科で声帯など喉に異常がないか診察を受けてみてください。

人の声は、複数の器官により調整されおり、なかでも声帯は重要な役割を担っています。声帯は気管の入り口にあり、息を吸うときは開き、声を出すときは閉じた状態で振動しています。

この声帯を動かしているのが、反回神経です。反回神経は左右に1本ずつあり、脳幹から枝分かれして、喉頭を通り越し、右は鎖骨下動脈、左は大動脈弓を折り返して(反回して)喉頭に入るため、このように呼ばれています。反回神経は甲状腺の背面近くを走行しているため、甲状腺癌が反回神経に浸潤したり、手術により反回神経がダメージを受けてしまうと、反回神経麻痺(声帯麻痺)を起こします。麻痺を起こすと、発声時の声帯閉鎖がうまくいかず、声がかすれたり、弱々しくなったり、長く続かなくなったりします。また、重度の甲状腺ホルモン低下によって声帯にむくみを起こした場合にも、声がかすれる場合があります。

ただ、声の変調すべてが甲状腺によるものというわけではありません。声の変調に気付いたらまず、耳鼻咽喉科で声帯など喉に異常がないか診察を受けてみてください。甲状腺と声の変調との関連が疑われるときには当院の担当医にご相談ください。